本研究グループは、統合失調症をはじめとする精神疾患のトランスレーショナルリサーチを行っています。

トランスレーショナルリサーチは、研究概念図に示したように精神疾患の脆弱性遺伝子を同定するリサーチリソース・データベースを用いた臨床研究と、同定した遺伝子に基づく治療法・診断法の開発のための基礎研究の二つの部分からなります。(図1)

研究概念図
図1 研究概念図(クリックで拡大)

精神疾患は,多数の脆弱性遺伝子(発症リスクを高める遺伝子)からなる遺伝的因子と環境的因子の双方により発症する多因子疾患と考えられています。

精神疾患の脆弱性遺伝子は,その発症リスクを直接的に高めるのではなく,精神疾患にて認められる特徴的な神経生物学的な障害である中間表現型(intermediate phenotype:エンドフェノタイプともいう)を規定し,その結果,精神疾患の発症リスクを高めるという新しい概念が提唱されました。

この中間表現型を用いて見出した疾患脆弱性遺伝子による精神疾患の発症メカニズムを解明と治療法を開発するために、神経細胞やモデル動物を用いてその遺伝子の機能を明らかにする基礎研究を進めています。

臨床研究部門では、統合失調症専門外来や統合失調症入院プログラムにて臨床・教育を行いながら、リサーチリソース・データベースを構築しています。

ここではヒトを対象として遺伝学、神経心理学、脳画像、神経生理学などさまざまな分野の仕事を行うため、大阪大学精神医学教室の認知行動生理学研究室や神経心理研究室をはじめとして、大阪大学人間科学部の臨床心理学教室、分子精神神経学教室等との共同研究にて成り立っています。

また、本研究にて収集したリサーチリソース・データベースは、日本一の量と質であり、世界でも有数であると言えます。

そこで、このサンプルをヒト脳表現型コンソーシアムとして公開し、多数の研究者に利用していただけるようにしています。

すでに、40以上の研究室から申し込みがあり、同様のサンプルを持っている東京大学、名古屋大学、藤田保健衛生大学の精神医学教室にもご協力をいただきながら、共同研究を進めています。

我々と一緒に研究したい方、研究手法を学びたい方、また共同研究を行いたい方は、どうぞ私のほうにご連絡ください。

精神疾患への偏見を打破し克服するための仲間をお待ちしています。

トランスレーショナルリサーチとは?

医療分野におけるトランスレーショナルリサーチは、経験科学である臨床医科学の定量化によってゲノム医科学を用いた臨床研究を基礎的な生命科学研究に結び付けて、最終的に臨床応用可能な新しい診断法や新しい治療法に結びつける研究のことを言います。

中間表現型とは?

精神障害の中間表現型は神経生物学的な指標で以下の6つの条件を満たすものである。

  1. 遺伝性があること、
  2. 量的に測定可能であること、
  3. 弧発例において精神障害や症状と関連すること、
  4. 長期にわたって安定していること、
  5. 精神障害の家系内で精神障害を持たないものにおいても発現が認められること、
  6. 精神障害の家系内では精神障害を持つものでは持たないものより関連が強いこと。

記憶・知能などの認知機能や、脳皮質体積・前頭葉機能などの脳画像、脳波・驚愕反応などの神経生理学的指標、遺伝子発現などが用いられている。

もっと詳しく知りたい!

こちらの研究紹介をご覧ください→私の研究紹介

大阪大学大学院大阪大学・金沢大学・浜松医科大学・千葉大学・福井大学連合小児発達学研究科附属
子どものこころの分子統御機構研究センター
(大阪大学大学院医学系研究科情報統合医学講座精神医学教室 兼任)

橋本 亮太

〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-2,D3
TEL:06-6879-3074 FAX:06-6879-3074
E-mail:hashimor@psy.med.osaka-u.ac.jp